野球と私F

中学生でボールボーイに行って、もう一つ思い出があります。
やはり岡山県営球場に、今度は、西鉄ライオンズが来たときのことです。 みなさんよくご存知の「神様、仏様、稲尾様」の稲尾投手のエピソードです。 ビジターの西鉄ライオンズのボールボーイだった僕は、三塁側ベンチで 一所懸命ボールボーイをしていたんですが、「あれが稲尾選手か。」と ボール以外には、稲尾投手に注目していました。もう晩年の監督になる直前の 稲尾投手でした。その日の登板のない稲尾投手は、オープン戦の気楽さも あってか、自軍ベンチで、ベンチにいる他の選手になにやかとイタズラばかり していたのです。実は「なんや子どもみたいやな。」とちょっとがっかり させられたのです。

ゲームが終わって、僕は、球団マネージャーの人から、「君、球団旗を バックスクリーンのポールから降ろしてきてきれへんか。」と頼まれたのです。 降ろしに行った僕は、下からひもを引っ張って降ろそうとしたのですが、 引っ掛かって旗は降りてきません。そこで思いっきり引っ張ったところ、 西鉄ライオンズの球団旗は、ビリビリビリと真っ二つになって降りてきて しまいました。「わあ、えらいことしてしもうた。」と思いましたが、 球団マネージャーの人のところへ持っていき、正直に「降ろそうとしたら、 引っ掛かって破れてしまいました。」というと「え、なんちゅう事をして くれるんや。」と怒って、「どないしょ。」と困ってしまった様子でした。 そこへ、先ほどの稲尾投手が顔をだして、「君、心配せんでもいいよ。」と 声をかけてくれて、事なきを得たのでした。とてもやさしい声でした。 一度に好きになってしまいました。 冗談ばかりしていた稲尾投手も、僕をかばってくれた稲尾投手も同じ人物なのです。

プロ野球で活躍できる選手のタイプについて、長島選手と同様に、 ヤンチャで物事にこだわらないことは、一つ条件だなと思ったのと、 人間は、一面だけを見て評価してはいけないことに気付かされました。 いい経験をたくさんさせてもらった中学校の野球部での活動の一コマでした。 その体験をさせてくださった岸本先生に感謝しています。 ありがとうございました。